2024.2.1

とてもショッキングなことが起きた

近頃ドラマ化された作品の、原作者の自死

私はあのドラマが、好きだった

その感想を持ってしまったことも、

さらなるショックに重なっている

 

自死選択をすることに対しては、

それはとてもショックだ、

そうとしか書けないくらいショックだ

しかし、

どれだけ衝撃を受けようとも、あくまでこちらは「他者」だ

その人がそれを選択するまでの長い苦悩なんて

知る由もなく暮らしている

 

この世の中には、

生きている方がつらい状況もたしかにある

それぞれが抱えてるものに関して、

一方的にこちらの価値観で

推し量れるものではない

あくまで、主観と、心の話だ

 

我ながら冷たいなと思う

しかし、その人が生きていて、苦しくて

苦しくて苦しくて苦しくて至ったことを、

否定などできないし、したくない

 

ただ、あなたが居なくなってしまった事実が

まったく信じたくないことだとか、

あなたがそこにたしかに居たことや、

伝えてくれた景色が、とても美しかったことを思う

 

原作者の作品をその後見てみると、

一つ一つの心の動きをとても丁寧に拾っている

痒いところに手が届いて、そっと柔らかく温かく

背中を撫でてくれるような

ここまでの繊細なものが描けるということは

どれほど、美しい人だったんだろう

 

それゆえに…(なんて繋げ方は不本意だけど)

この世の悍ましさみたいなものを、

手に取るように、

何度も何度も感じた事だろうと思う

 

誰それが悪だ

誰それを言及しろ

謝罪しろ

説明しろ

納得させろ

 

一件以降、絶え間なく、

SNSには責任を伴わない言葉が

飛び交っている

 

たしかに、いままで水面下にあった

原作者を蔑むという

あってはならない問題が浮き彫りになった

そこへの改善アプローチは大切だと思う

今後の大切なものを守るための必要な行為だ

 

しかし、世の中には

誤った決めつけや思い込みで

正義を振りかざし続けている人が

相当数いる

イタズラに囃し立てて、攻撃している

 

どうして、何も知らない場所にいて

この人たちは何もかもをこうやって

言い切れるんだろう

どうやっても事実にたどり着ける場所に

居もしないのに

 

しかもこれが、一人や二人じゃない、

何人も、何十人も、何百人も、何千何万も...

 

どれもこれも、本人のみしか

言い切れないことだというのに、

自惚れの正義の元に、

一体、何を高らかに語っているんだろう

 

センセーショナルな一つのことが

手元に落ちてきた時、

光の速度で群がり、考えることもせず貪り、

腹ペコな自分たちの承認欲求を

我先に、嬉々として満たして

 

そんな、人間の姿に、

嫌悪

絶望せずにいられることができるだろうか

 

人が自らに手を下すほどの絶望に至るとき

たった一つの事柄が起因となることも

もちろんある

しかし、今回のような場合、まず、

長い歳月をかけ、

コンスタントに蓄積され続けたものによる、

所謂、『溢れたコップ』現象が浮かぶ方が、

自然なことではないかと思う

 

『この人達に私の作品を踏み躙られた

 いじめられてしまった

 だから、この世からバイバイ』

 

そんな瞬間的な心理動線は考えにくい

子供同然に大切にしてきた命ある作品、

守り続けてきた日々がある

 

それなのに、まるでこの一件は

『ソレが原因なんだ』、と確定揶揄が目立つ

彼女の味方をしている気になって、

無意識に、故人の精神を推し量っている

冒涜の洪水に、めまいがする 

 

一体彼らは、誰のためにやってるんだろう

納得するため、なんて言葉を使って、

それは一体、誰のための納得にあたるんだろう

人の死に、納得も何もない

滑稽な姿、見るに耐えかねる

 

追い詰めた大きな大きな正体は、

こういうところではないのか

 

さらに、悍ましく感じるのは

現実では、

涼しい顔して歩く人達

その中の誰かが、

SNS内では、そんな投稿主という事実だ

 

底なしに、不気味だ

 

本来SNSは、有益な情報だったり、

趣味仲間や共感をえたり、

救いのツールになることは間違いない

 

しかしながら、人間というものの本質を

不幸にも誘ってしまいがちなのだろう

心の隙間につけ込む、匿名という盾があるから

 

 

もうひとつ

今回の件で感じたこと

エンタメ作品の触れ方、について

 

昨今、原作からの実写化作品は、

人気を集めている

私も、それを味わっていた一人だ。

 

冒頭でも書いたように、

私はこの作者の遺作となってしまった作品の

原作を知らずにドラマから入った。

そのため、毎週見ていて、くしくも

面白い、と思ってしまった

 

しかし、

今回のような『背景』を目の当たりにすると

作品との向き合い方について

見直さなければ、と背筋が伸びた

と同時に、とんでもなく、

大きな罪悪感で包まれている

 

私は幾度となく、

原作者や脚本家、何も考えずに、

ただただ実写化ドラマ、実写化映画を

作品オンリーで楽しんできた

 

それが結果的には

こんなにも原作者を苦しめる追い打ちであり、

悲しい結末を迎えるひとつの要因への

間接的加担になってしまっていたとは

 

『無自覚の罪人』になってしまっていた

 

知らぬ間に、原作者を傷つける、

冒涜している場合もある、

ということを、悲しくも、学んだ

 

生みだされた作品に対して、

私は誠実でありたい

産みの親に対しても、それは同じだ

 

オリジナルを疎かにすること

生みの作者を第一にリスペクトしないことは

絶対にあってはならないこと

始まりも終わりもなくなるゴースト、

極めて重罪だ

 

まさか、映像化されるということは

全てが協定同意されてるという思い込みが、

知らずに罪を招いているとは、恐ろしい

 

きっと、もっともっと、

事実を知らなければならないことが

この世の中にはたくさんあるんだろう

 

この先、目を背けず、

どこまで見つめていけるだろうか

 

私も結局は、生きていく上で

自分自身を満たすことを優先に選んでいる

それが悪いことではもちろんないけど、

広く見渡せば、誰かを無自覚で

傷つけていることもある、と

心に戒めておくことは、必要だ

いつ何時どの場面でも

自戒

 

そして何よりも今、強く思うのが、

旅立ってしまったあなたが、

今、この現状をそちらから見て、

どうか、悲しんでいませんように

どうか、美しい自分を否定せずに

ありのまま過ごせていますようにと

願わずにはいられずにいる。